為末大からのメッセージ

2008.05.12

 ダーウィンの進化論というのに興味を持ったのは、所属先の会長のとある言葉がきっかけでした。『獲得形質は遺伝しない』、はじめは何の事やらわかりませんでしたが、説明を聞くうちにそれが気になって仕方なくなりました。

 獲得形質とはつまり、その個体が得た形質は次世代に遺伝しないという事です。噛み砕くと、自分たちの人生で得た能力は子供には遺伝しないという事です。私がいくらハードルを跳んでもハードルがうまくなった子が生まれる訳ではありませんし、首長族の子どもたちも数百年続いている伝統にも関わらず、その首はいっこうに長くなりません。当然いくら走った所で足の速い子は生まれてこないのです。
 そこで私らしい疑問が一つ浮かびます。ではなぜ100mの世界記録は出続けるのか。身体のポテンシャルは高まらないのなら、なぜ人の足は速くなり続けるのか。この世界にいる体感として、これはすごく違和感がありました。にも関わらず生物学や遺伝学の世界でこの事は当然のように受け取られている。それにすごく興味がわきました。

 自分たちがどこから来てどこに行くのか。人間の根源たる疑問もここに答えを見いだせるのではないかと感じました。私は、私に最もわからないのは私であると常々思っています。私がわかるようであれば、その時はすでに私は私じゃないんじゃないかなんてややこしい事を考えていますが、少なくとも哲学の方面ではなくとも生物学的に自分たちの出所と行き先を知りたいと思っています。

 そうやって30年間の蓄積の中でいくつかの疑問が積もり積もってついにある一点を見つけたのが、ダーウィンの進化論でした。

2008.05.12 | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック(0)