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2009.08.26

世界陸上を眺めて思う事

 今回世界陸上を見てみて、よく考えれば今までこうやって自分が今までやっていた事はなんだったのかを眺めた事がなかったなとふと思いました。
 自分の姿を客観的に認知するのは非常に知的な行為であるというのを前に本で読みました。そういう意味で三種の神器に鏡が入っているのは象徴的かもしれません。
 今まで一生懸命外から外から見ようとしていましたが、こうして本当に外から見てみる経験をしてみると、想像とはやはり違うところもありました。

 今回の世界陸上で一番驚いたのは、村上君のメダルです。これは非常に大きな希望を陸上界にもたらしました。

 これまでの陸上選手で、記録が日常的に世界の三番手に届いているという事はまれでした。知っている限り室伏さんとあとは女子マラソン、昔には溝口さんと、それから三段跳びがお家芸だった頃の日本の三段跳びくらいでしょう。現在ではほとんど見かけません。
 ですが、いざ本番、世界の舞台のその瞬間でのメダルという事になりますと、これはかなり記録のレベルが低くなります。日本選手の自己記録でも十分届く事が考えられる記録もありました。今回の村上君もそうですが、これまでを振り返っても幾つかチャンスがあったわけです。

 しかしこれができなかった。一発出ればとれるはずのメダル、ファイナルがどうしても届かなかったのです。民族的に勝負弱いのか、それともはたまた陸上だけか。そういうコンプレックスが我々の心理の底辺に漂っておりました。

 そういうこころのもやのような一切合切のものを吹き飛ばした、村上君の一投でした。何より、日本陸上界の深層心理にある、こんな事我々には成し遂げられないという壁を彼の一投が取っ払ってくれた事が一番大きい気がいたします。


 アメリカでの代表選考は、一発選考です。待ったなし、敗者復活はありません。以前、ダン・オブライエンという十種競技の選手が、棒高跳びに失敗し、オリンピック代表を逃した事がありました。当時の世界記録保持者です。
 どこの国でも、のどから手が出るほど欲しい金メダル候補を、アメリカ陸連は救済なしに切って捨てました。おそらくそのオリンピックでは本来は、金メダルがもう一つ加えられていた事でしょう。しかしながら、アメリカは一度の金メダルより、今後金メダリストを輩出し続けられるようなシステムを取りました。
 アメリカ選手権を抜けてきた選手は、やはり本番でも強さを発揮します。速いだけの選手はその予選で淘汰され、強い選手だけが生き残るような自然淘汰のシステムとして成り立っています。
 

 数年ほど前、私がメダルを取ったとき、室伏さんも初めてメダルを獲得しました。二人に共通していたのは海外転戦で経験を積んだという点です。海外転戦をしなければ世界で戦えない。そう云われました。

 2003年、末續君がメダルを獲得したとき、なんば走法が日本中に流行しました。日本人にあった走りでなければ勝負できない。そう云われました。

 去年、朝原さんがリレーでメダルを獲得した後、一体何が原因だったのかという事が探られました。おそらくは自分で考え、そして実践して、かつ長く続ける事。その辺りに帰結しているんじゃないかと思われます。ちなみに朝原さんはなんばというものをついぞ意識した事さえありませんでした。やはりヒントは欧米選手も含めて世界中にありと公言しておりました。

 今回村上君はメダルを獲得しましたが、彼は全てのトレーニングも試合も日本で行っています。たぶん一度たりとも海外のグランプリを転戦した事はありません。しかしそれでも、確かに世界大会のメダルは彼の手に収まりました。日本で技術を丁寧に磨いた結果です。

 成功した瞬間のその選手の要素のどこかに成功の要因を見つけ出そうとしても、それはおそらくその人が成功する前に、その要素が見ぬけなかった人には見る事ができません。表象しか見えていないと、結局歴史の波に翻弄される事になります。ボルトが速く走ってから、彼を観察したのではもう遅いのです。

 吉本興業は、偶発的に出てくるお笑い芸人というジャンルを、スクールを作る事で才能を集め、開花させ、それから出てくる一握りの芸人を押さえるというシステム構築をしたところに強みがあると、以前聞いた事があります。システム構築の一例ではないでしょうか。

 
 表象ではなくテクニックでもなく、世論に振り回されもしない、本質的な長期戦略が重要なんでしょう。
 そういう意味でこれから先、メダルまでの壁を取っ払ってくれた彼の一投は、陸上界の意識を変えるかもしれません。

2009.08.26 | 固定リンク | コメント (9) | トラックバック (0)

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Comment

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tame(●^o^●)さん、。
夏も片足秋につきとばされそうですがいかがお過ごしッス?
村上選手のテレビ見ました。
日本選手権10連覇の経歴や、ご自宅の、ご家族の
様子を見てるうちに、。。。。
っていうか、村上選手は為さんと年が近いんですけど~~
(;一_一)
為さんを、村上選手みたいな、あふれる愛とやわらかい風に
早く包ませてあげたいと思うのは私だけでしょうか。

戦国武将は、まわりから地固めしてんじゃあ~りませんか
ヒント、みつけ~。
戦国時代の武将様のような環境をつくってみる?
フランスの国技ののオリンピック選手は『メダル獲得のため』
の意識も覚悟も力はいってるし、しびあ~だし。

為さんは、海外で経験して何が変わったのでしょう。
その辺は、経験者談として、伝授するだけでは足りない?
講習会?実践模擬たいけん?
『グローバルな時代』なのですよねえ、、、、。
では、為さんは?サンディエゴでまったりビーチ散歩
犬と散歩・・・・。ひとりで散歩するのと、犬と散歩するの違い
もとい。
日本で、何ができる?
・・・・。
実績のバックボーンがありながらの今回のめだる。。。

フェンシングの太田選手の場合も同じ不思議ちゃんで、
なんで、つえ~んだろ?と、ず~~~と思ってた。ッス

でしょ、( ^^) _U~~
今回のお題は面白すぎて頭の中の仮想体験。。。。
アインシュタインはそれが、大得意だったと。。。。。
ラボ!つくっちゃいますか?
宇宙飛行のラボみたいに。
ああ~~~あああ~~たのしみだ~~・・・。

村上選手のお子さんはすんごく、そっくりで可愛かった。
(=^・・^=)じゃっ。

投稿者: ゆりっぺ (Aug 26, 2009 9:40:41 AM)

 村上選手の活躍、とても感動しました。

  後の報道で彼はもとは野球少年だったとのこと。地肩の強さを見込まれて転向したそうですね。
  日本では何か一筋にがんばり続ける事が良しとされます。スポーツでもその傾向があるように感じます。もちろんすばらしいことではあるのですが、切り替えの機会はもっとあっていいと思うのです。スポーツが学校の部活を基本に発展して来た日本的土壌によるものでしょうか。このスポーツからあれへ、ちょっと違う競技も試しにやってみよう、という機会が少ないのです。

  村上選手を見て、どこかの野球少年が、「あ、やり投げって競技もあるんだ」と思ってくれたらステキだなと思いました。バスケ少年が高跳びを、サッカー少年が短距離を、やってみたら今までとは違う可能性がそこに広がっているかもしれません。

  少子化の今、子供の競技人口はパイの食い合いです。陸上競技が子供たちの選択肢の一つとしての存在感を増すためには、広報・啓蒙活動が絶対必要ですね。
 わたしの陸上への関心は、為末選手の積極的な普及活動に負うところが大きいです。ストリート陸上も素晴らしかったです。これからも陸上競技の楽しさをどんどんアピールして下さい。それは未来に向け、とても意義ある活動だと思います。

投稿者: まほ (Aug 26, 2009 10:51:14 AM)

確かに今回の村上選手のメダルは、「為末的」でしたね。

「早い選手」なら日本にも割りといるのではないかと思います。
が、「強い選手」はほとんどお目にかかることがありません。

技術的なことも大きな課題でしょうけれど、「早い選手」が「強い選手」でないことの方が、本当の課題なのでしょう。
そっちの課題をクリアした方が、成果が上がるんじゃないかと思います。

投稿者: シロ (Aug 26, 2009 12:36:47 PM)

為末さんや末續さん、室伏さん、渋井さんが出場しない世界選手権は、

個人的にはさびしく…、

また日本国内では、マスメディアも視聴者も(インターハイ=総体に臨むたくさんの高校生より)甲子園=高校野球に偏り過ぎるため(球児である生徒は悪くありません、取り巻く環境が…ちょっと狂気だなぁと感じます)、

活気のないものに終わってしまうのではないか…と危惧していました(;^_^


しかし、女子の長距離で中村さんや小林さん、福士さんが勝負を挑み、競歩で渕瀬さんが入賞しましたし、
マラソンでは男子長距離(3000mSC)の岩水嘉孝さんが、(ほかの男性スタッフが手渡しに失敗した)給水のボトルを的確な判断と華麗な動き(…というか、走り)で届け、尾崎さんの終盤の勝負をアシストしました。


村上さんの予選と決勝の姿にも魅了されました。
村上さんは、冬期に朝原さんや(今年の夏はボブスレーにも挑戦している、村上さんからは大学の後輩にあたる砲丸投の)畑瀬さんらとともに
「キッズアスリートプロジェクト」
で小学校を訪問し、
一緒に給食を食べたり、実技を交えながら競技の魅力を伝えるなど、子どもたちとの交流を通じて陸上競技の普及に尽力されている競技者のひとりです。

(為末さんも、もちろんこのプロジェクトに関わってこられました)

わたしは、村上さん御自身のお子さんやプロジェクトを通じて村上さんとふれあった子どもたちの笑顔が、彼の飛躍とメダル獲得の力になったんだろうと思っています。


陸上競技関係者の中には、(時期が冬ということもあり、駅伝やマラソンといった長距離ロードレースのシーズンと重なることもあって)こういった活動に否定的な方もいらっしゃるようです。


しかし、(個人的には)
日本の陸上競技の将来について考え、このような活動を能動的に行っている人、
(自身のことだけ、自分の専門種目だけを考えず)異なる種目の競技者や指導者(あるいは、全く異なる分野・職種の方)と連携して何かに取り組んだり、意見を交わすことができる人にこそ、
「世界選手権・オリンピックでファイナル進出」
「世界大会での自己記録更新」
「3番以内での勝負…メダル獲得」
…そういった輝かしいStageで闘う権利、輝くものを獲得できる資格を与えられるんだろう、と感じています。

為末さんと同学年の佐藤敦之さんも(河野匡さん以外では長距離で唯一?)御結婚前(?)に美保さんや福島大・女子ロングスプリントの方々とともに地元・福島でプロジェクトに関っておられたようですから…。

…無駄になることはない、マイナスにはならない…むしろ、プラスにできる人が強くなり、いつか報われて結果につながるんだと思います。


村上さんには海外転戦もやってほしいなぁと思ってます。

投稿者: あすれ (Aug 26, 2009 1:47:41 PM)

Hello☆

今回の世界陸上、ほんと面白くて、とっても楽しめました^^☆
1日だけ、外で観て、あとは日本で観てました^^。
村上幸史選手、お名前は知りませんでしたが、やり投げをはじめ投擲のあの雄叫びが好きで^^よく注目して観ていました。
今回も、予選からずっと応援していましたが・・・もう感動!!
村上さん、今回で顔とお名前もバッチリです☆
今、携帯からですが電源がもうすぐ切れます。
また後でね。
(・^-^・)☆

オナカスイタヨ~。

投稿者: karen-t☆ (Aug 26, 2009 6:27:26 PM)

大さんの解説は、自分の人生を考える上でも、とても参考になります。
今3回読みましたが、もう少し繰り返し読ませていただきます。

投稿者: ダイ・ハート♪ (Aug 26, 2009 10:29:55 PM)

Hello☆

こちら、秋の匂いがほのかに流れてきてます
涼しくて気持ちいいです
蛙くんたちはうるさいけどね
この匂いサンディエゴまで届くといいなぁ・・
お身体、ゆっくりじっくり順調よく再生していますように・・
オヤスミナサイ
(-.-)zzZ・・☆

投稿者: karen-t☆ (Aug 27, 2009 1:10:32 AM)

以前から、村上選手の事は知っていました。

愛媛の☆彡となってくれて嬉しいです!!

自分の立ち位置。

それは自分で考えて出す結果。

ひとそれぞれだと思います。

見る側としてワクワクさせて頂きました!!

投稿者: ムータン (Aug 27, 2009 1:23:03 PM)

tame(●^o^●)さん、お疲れ様です。
この夏は蝉の声の短さに危機感(;一_一)
コオロギの、鈴虫の声の賑やかさに安堵してます。。

世界陸上を眺めたところで、ひとつ。
『疾きこと風の如く、徐かなること林の如く
侵し掠めること火のごとく、動かざること山の如し』
そんな、事を、今回の文章から、思ったなり。
それは、ゆっくりと、確実に近づいている。
かもしんねい。(*^^)v

投稿者: ゆりっぱ (Aug 28, 2009 11:41:29 PM)

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