message

2008.05.07

The Selfish Gene

 オーストラリアで読んだ本ですが、邦題を『利己的な遺伝子』といいます。遺伝子の細部への話が書かれていて、それが非常に興味深く、一気に読みました。利己的な、というのは、自己の利益の追求であるという意味です。それを利己と訳した方のセンスもすごいと思いました。

 遺伝子の最も小さな単位をジーンとしているのですが、その遺伝子単位ではすべての原理原則はそのコピーを残す事のみに向けられているというのが大まかな本の内容です。
 すべての生物は自分の遺伝子を残す為に生きていて、その遺伝子が作り上げた生物と言う個体同士が、地球の上で生存競争を行い、より合理的に環境に適応した遺伝子のみが生き残る。その際に競争しているのは個体である我々の体一つ一つではなく、実はそのもっと小さな遺伝子と単位同士が競争している。その結果がこの地球上に生き残っている生物なのだ。

 コピーと言わない方がいいかもしれません。それそのものが伝わっていくという方がイメージしやすいでしょうか。

 遺伝子がコピーを残すという事は我々のようなほ乳類の場合、子供を生むのが遺伝子のコピーを残す方法です。ただ、コピーは異性の遺伝子と混じっているので2分の1のコピーになります。
 この本は1970年代に書かれましたが、非常に物議を醸し出した本だそうです。それは書かれている内容が宗教的な教えと非常に相反する点が多い事にあります。これはダーウィンが進化論を発表した時にも同じ事が起こりました。生物を理解しようとする行為自体が、宗教的倫理に抵触してしまうのかもしれません。

 本の中では異性に感じる愛情や、母親が子供に注ぐ無償の行動、その他同種族間での犠牲的行為、これらをすべて遺伝子を残す為と説明しています。異性に感じる愛情は自分の遺伝子を残すため、母親が子供に与える無償の行動は自分の遺伝子を守るため、同種族間での犠牲的行為は、その種族間に広がった自分の遺伝子量を思えば、個体の犠牲の方が小さい被害だから。
 科学の現象をつい現代社会に当てはめたくなるのは最近の傾向ですが、科学は科学、我々の文化は文化としっかり線引きしなければいけません。そういった文化の面で残る遺伝子の事を本の中でmeme(ミーム)と定義しています。こちらの方が人間にとっては重要だと。人は人の中に生きて人になる、ようなものでしょうか。

 さて、遺伝子の話に戻ります。遺伝子の細部の細部に向かっていくと、その源流を考えたくなります。遺伝子の源流は比較的簡単に戻れます。両親からしか遺伝子を受け継いでいないため、人間の精子と卵子をたどって上に登っていく事ができます。精子も卵子も、例えて言うなら乗り物です。同じ遺伝子のコピーが形を変え、次の個体に乗り移る手段なのです。逆流して考えますと体の中にある遺伝子は必ず両親に存在します。突然変異で少し変化がある以外は全く同じものが両親のどちらかに存在しています。

 両親のコピー元はその両親にあります。さらにコピー元はその両親、際限なく遡ってゆくとその遺伝子を共有している生物の元のようなところに行き着きます。それはおそらく個体ではなく、海中にうごめく目に見えない点のようなものだったのでしょう。
 それらが流れ流れてこの体になっているのです。途中で枝分かれしたものがワニになり、魚になり、植物になりました。突然変異でいろいろな形に姿を変えましたが、その根源たる遺伝子は実は同じものを共有しているのです。
 
 私はこの本を読んでなんとも不思議な気持ちになりました。全く別の生き物であったりするものに同じ遺伝子が共有されているのです。それらは胎児の姿がどの動物も似通っている事でもわかります。時間軸を無視して言えば、遺伝子元は同じである親戚なのです。
 うまく表現できませんが、自分の体がどうも自分のものでないような、ただ遺伝子が伝わる過程のいわば伝達機関に過ぎないような気持ちになりました。遺伝子はこの個体を通過して次の世代に伝わっていくとすると、これがすべてだと思っていた自分の人生が、気が遠くなるほどの時間遺伝子が流れてきて流れていく、そのどこか一瞬を生きているだけのような気がするのです。
 
 さて、少しぶっ飛びすぎましたが、遺伝子を考えていくと非常に宇宙的になるという事に気づきました。神は細部に宿るというのはこういう事かもしれません。小さなような大きなような話です。
 遺伝子と進化が気になってこの一年間いろんな本を読みました。なのでしばらくそういう系統の話をすることにします。いずれダーウィンの進化論の話をします。

2008.05.07 | 固定リンク | コメント (14) | トラックバック (0)

Comment

テーマと関係のないコメントは削除させていただきます。

みんな、(地球で生まれた)地球上の生物である。ということでもあるんですね。
お話よくよくわかります。
本の題名だけは知っていましたが、読んだことはありませんでした。
「全く違う生き物であったりするものに同じ遺伝子が共有されているのです。」このお話は、最近知りました。そこでおもったことは、みんなそれぞれ違う、異種間どうしであっても、(やたら、決め付けて、擬人化してはならないとは思っていますが)一人一人違うけど、どこかで、わかりあえる。植物や、動物や、ひとに出逢ったとき、命の大切さや、いとおしさが出てくるとおもいます。

投稿者: 4090 (May 7, 2008 11:09:29 AM)

突然変異で姿を変えた、、、
人間もその一部なのでしょうが、、、
どうもよく分かりません?
進化論の工程が今現在も行われてもいいような気がするのですが、、、
過去にも行われたように、、、
知らないだけ、、、私が???

投稿者: WING (May 7, 2008 1:30:58 PM)

分子生物学関連の小説は、村上龍とかも'80~'90年代に書いてますね。
自分も少し読んでいました。

投稿者: シロ (May 7, 2008 8:53:23 PM)

本当にぶっとびましたね、でもそこまで深く考えられるとこ本当に尊敬します。為末さんのような乗り物に乗った遺伝子の未来はどんな進化をとげるのか見てみたいです。

投稿者: オー子 (May 7, 2008 11:06:24 PM)

こんにちは。


なんてタイムリーな話なんだ、ととても面白くよみました。
長いのですが、本筋からはなれない上手な文章にも感心しました。
テレビでダーウィンのことが話されていて
ダーウィンがどんな時代にどんな事を説いたのか
ネットで調べてみる機会がありました。

ひとつ頭にのこったのが
なんでもないミミズの研究に何十年も注力したことと
どんな生物もつながっていて無意味なものはない
そんなことでした。

神は細部にやどる、というのも大好きなテーマです。
そういうところに意思が感じられるようなきがします。


投稿者: chicchi (May 8, 2008 1:21:15 AM)

相変わらずとても分かり易くて、ほんと面白いです。感心。
耽美的とも言える不思議な余韻が残り、しばし考えておりました。
・・・、しばし浸りたい、と申し上げた方が正しいのかも知れません。今尚。

“少しぶっ飛びすぎました”にはぶっ飛びそうになりましたけどね^^
お茶、ギリギリセ-フ。
また☆

“ダーウィンの進化論”楽しみです☆


投稿者: karen-t☆ (May 8, 2008 10:13:51 AM)

先日、『生物と無生物のあいだ』を読み、かなりの衝撃を受けました。今、『利己的な細胞』が届きました。
今回のmessege、それとは別に何かひとつの書を読み終えた感じがいたします。
為末さんの流れる言葉ひとつひとつがとても印象的です。

まとめてあすこの場でお喋りしましょっと^^。

足、安全に。治りますように。。☆

投稿者: karen-t☆ (May 9, 2008 10:00:34 AM)

訂正。

『利己的な細胞』→『利己的な遺伝子』
ヨロシクネ☆

投稿者: karen-t☆ (May 9, 2008 10:05:33 AM)

大変面白い話として拝見させていただきました。
我が家もNHKの『生き物地球紀行』などから動物系は両親が好きでよく番組で宇宙や地球、そこに生きる生物の話などは昔から見ています。
私の体や私の歴史は先人から受けて継ぎへ繋げる一つの方法というかチェーンで表現するとその中のひとつの輪なんだと大きく全体から観ることが出来る気がします。
私達の中にあるこの小さくて不思議な、小さくて偉大な遺伝子ははたしてどこへむかって。。。繋がっていくのだろう。。。そう想いを馳せそうです。
少し前に世界には6人か8人(それぐらいの偶数でした)の母がいて国籍関係なくその6つの遺伝子に(ここでは6人だった記憶にゆだねます)誰もが通ずるのだそうです。
レポートされた女性の方の遺伝子と同じ型を持つあまり耳にしない国でしたがその国の女性に最終的に会いに行った遺伝子的な話の番組を見たことがあります。
私はいったい何番目の母の遺伝子でどこぞの国の全然しらない知るはずもない人と同じ型の遺伝子を持っているんだろうと少しワクワクしたものです。とても印象的な話でしたから詳しくは覚えていませんが思い出しました。
まったく壮大で不思議な生物の繋がりですね☆
今年劇団四季のライオンキングを観にいきましたがまさにその中にある曲の歌詞の通り
『いのちはめぐる』だなと思いました。

投稿者: 麻衣 (May 9, 2008 12:16:16 PM)

「人間は遺伝子の乗り物に過ぎない」そう考えるとちょっとむなしくなってしまいますよね。
実際そうなのかもしれませんが・・・
『生物と無生物のあいだ』、去年の今くらいに読んだのですが、これもムチャクチャ面白い本でした★

投稿者: スポーツファン (May 9, 2008 2:21:59 PM)

こんにちは!

長く難しい内容の文章でしたが、要約していただいたおかげで比較的スラスラと読めました(^_^)

遺伝子的には同種のものを残すために愛が生まれ子孫を残すということになりますが、人は誰かを愛するときには理論的には考えませんよね☆

人間は元々狩猟をしながら生活していた訳ですが、そう考えると、オリンピック等の競い合う類のものもそれの延長線上になるんだなと自分の中で考えていました。

一時のような、資源を争ったり、宗教間で争うようなことではなく、スポーツや経済・外交のようなクリーンなことでお互いを高め合っていって欲しいですね!
その中で、お互いの国や文化を称え合うような関係になれたら最高ですね(^_^)

投稿者: 為末選手応援しています! (May 9, 2008 6:15:29 PM)

すっごぃたくさんの神秘的な力がはたらいて、今自分が存在してるんだぁ…と思ったら感動shineです(>_<)大事に大事に生きていかなきゃ〜confidentbudでも、遺伝子の話しって難しいですねhappy02sweat01かぁもちょっと勉強しますnote

投稿者: かぁ (May 10, 2008 9:18:34 PM)

大阪GP、録画できてなかったョ。
悔しいぃー(><)

昨日は友達と硝子のはんこを作ってました☆
レーザーで?
ほんと楽しかったです☆
為末さんのも作りました☆勝手に。いつか・・^^
また写真UPしましょ。。
大阪GPは観れなかったけど、気を取り戻してお喋りいたします^^
『利己的な遺伝子』、為末さんの要約のお陰で比較的とても入り易かったです。三十周年記念版の〈増補新装版〉で概説補注が補足されてあり、難解な箇所は、その補注とを照らし合わせながら読んでおりました。多少理解に苦しみました、さっぱりわからなかったりと。でもやはり半端なくとても面白いです。まだ読み終えていませんが。
先日、お話の中でご紹介がありました『生物と無生物のあいだ』の、ことの意味がより理解しやすかったです。
同じく自己複製するシステムで、こちらの方が細胞そのものにも、生命・生態環境を齎せて自然淘汰とも言える行方を丁寧に深く掘り下げていた印象を受けます。
『利己的な』、と訳されているのには確かにセンスを感じました。言葉の意図する所に、著者の少し皮肉めいた、ある種笑いのセンスも感じました^^。徹底された遺伝子からの観点によるその利己的さは、個体間の相互的な利己・利他主義の行動をより面白可笑しく生かされているように思います。読み物的に。また、後ほどの人間的なミームも、人間の脳を乗り継いで繁殖するところに、やはり徹底した遺伝子観点とその利己的さが論理的に作用されているところも著者どくどくの面白みを感じました。ほんと、人は人の中に生きて人になるんでしょうか。
まだ途中ですが、またいずれ☆
でもこれらの本や、今回の為末さんのお話で結局私が一番感じたことは、
この世に、こうして人間の女としてこの世に生まれてきてよかった☆と

投稿者: karen-t☆ (May 11, 2008 12:18:46 PM)

Dawkinsの本といえばThe Blind Watchmaker: Why the Evidence of Evolution Reveals a Universe Without Design
も面白いです。
進化論に反対する人々は「眼」のような複雑な器官が進化によって発生するとは信じられないとよく言いますが、DawkinsはBlind Watchmakerでこの疑問を見事に説明しています。

投稿者: K Ken 中村 (May 12, 2008 12:35:17 PM)

Track Back

この記事のトラックバックURL: http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/95993/41119278 こちらのトラックバックのお約束をお読みの上、ご投稿お願い致します。

この記事へのトラックバック一覧です: The Selfish Gene:

コメントを書く


※メールアドレスは外部には公開されません



個人情報の利用目的