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2008.05.14

ダーウィンの進化論3

 遺伝子のさいころの結果を受けて、後は自然界の競争に身をゆだねる。これらは進化の基本的な考え方ですが、しかし人間はそのたかが数万年の歴史の中でこれを覆す新たな伝達方法を編み出しました。これが私の疑問を解き明かしてくれました。『人の足はなぜ速くなるのか』をです。

 我々の遺伝子とて、進化の方法を覆す事はできません。先天的に人の足が速くなる為にはそう遺伝子が変化する他ありませんが、それが生存に有利になると望んだ所で、そうは突然変異は起きてくれません。偶然を待つしかないのです。また足が速くなった所で、足が速くない個体が死に絶えるような局面が世の中にありふれていたり、また足の速い人がよりたくさんの子孫を残せるようになる以外には、足が速くなる方向への進化はありえません。ですが人の足は速くなり続けています。
 以前の私にはどう考えても、人の足が速くなり続けているとしか思えませんでした。正確にはそのポテンシャルが高まり続けているとしか思えなかったのです。
 
 ここ数年で私は人の足が速くなる事を知りました。先天的ではなく、後天的に、努力と閃きとその実践によって、人の足が速くなる事をしりました。
 思えば人は科学や学問や経済の進歩を驚きません。それは当然であるかのように受け入れ、そこから更に積み重ねようと努力します。

 もしも現代の幼児を数百年前に置いてきたとして、その子は株式市場を、インターネットを、プライオメトリックトレーニングを思いつくでしょうか?きっとその子はその時代なりの、文明度合いになじみ、けして数百年も文明を先どる事はないでしょう。進化論的に言えば、頭がいいと言う事がよほど性淘汰に有利に働く、つまり異性にもてる要素でなければ、それほど人間自体の知性のポテンシャルは変わらないからです。
 人間の文明の進歩、それが成せるのは、今までにある経験や知識の蓄積であり、それらを前提とした所に進歩があるのです。
 
 人の足は速くなり続けています。けれどもそれは100年前と比べて足が速い子が生まれてきたからではありません。100年前と、今の人間の生まれながらの足の速さは先に説明した通りほとんど変わらないのです。それがこれだけの記録の進歩を示しているのは、すべては栄養の充実と、才能をもった人間へ開かれた道と、この現代に蓄積された『足が速くなる為の方法』によるのです。

 足の速さが先天性であるという、どこかで自分の中に残っていた思い込みが、自分の足が速くなる事によって後天的なものも多分に影響すると信じられるようになりました。進化論を知るうちに、獲得形質が遺伝しない事を知り、足が速くなり続けているメカニズムを考えるようになりました。それらは文化の蓄積によって成されている事、それを知って感動すら覚えました。

 日本人の体型を考えた秘伝の方法が伝達されれば、我々が100mの世界で一番になれなくとも、平均して世界一足が速い民族になる事も可能なのではないかと私は信じています。すべては今の現役選手が考え抜いた知識がいかに蓄積されるかによります。

 長々長々と進化論について語りました。私の毎日新聞のコラムを『ハードラー進化論』といいます。担当の記者さんにつけてもらった名前ですが、なんといい名をもらった事かと感慨深い思いでいます。

 最後に私の好きな言葉を一つ

『強いものや賢いものが生き残る訳ではない。ただ変化し、環境に適応したものだけが生き残る』チャールズ・ダーウィン
 

2008.05.14 | 固定リンク | コメント (10) | トラックバック (0)

Comment

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足は努力で速くなると私も言い続けています。
なかなか理解してもらえませんが、
確かに日本代表にはなれないかもしれませんが、昨日の自分より速くなる。なんていい言葉でしょうか。。。
平均で1番になれれば突然変異で頭二つくらい出る日本人が出てきても不思議ではないようなそんな気がしてきました。

投稿者: WING (May 14, 2008 9:14:36 PM)

為末さんのブログにはしばしば啓蒙され、感動すら覚えます。
素晴らしいです。

投稿者: nori (May 15, 2008 12:18:12 AM)

進化と進歩、興味深い話ですね。
為末さんの著書「走りの極意」も進化の最中の書という感じがいたしました。
 続編も期待しております。

投稿者: sabitori-tj (May 15, 2008 12:57:40 AM)

今日のブログは遠い過去の勉強を思い出します。

久しぶりにお邪魔させていただき為末さんの知識の豊富さに畏れ入りました。

今の私が思っている心境です。

有難うございました。

投稿者: ムータン (May 15, 2008 11:37:54 PM)

ほんとに為末さんらしいです。
感心しておりました。
やはり素敵です☆その知性も。
情熱を感じます。

日本人の足が速くなる進化は、その情熱で突き動かされ、その情熱なくして進化も有り得ない気がしました。
きっと文明や文化などの人間環境も、人間の持つ知識、経験、努力などの積み重ねも、これらの前にその情熱があり、これらに働きかけているのでしょうか。
今回『The Selfish Got』に始まり『ダーウィンの進化論1・2・3』を拝読し、感じたこと。
ひょっとしたら、突然変異や自然選択などの単位は遺伝子でもなく個体でもなく群でもなく、その目にみえない情熱なのでは、と思いました。見えない情熱そのものが〈環境〉となり、〈環境〉が環境を作り、又は環境を引き寄せ、いつしか目に見える環境化へと変化していってるのでは、と。
すべての環境と生命はこの情熱の環境化であるような気がしました。
いや、生命だけでなく、本や新聞そしてこの場も含めた無生物もまた、その情熱の環境化であるように思いました。
為末さんを知りそう感じました。
今回の為末さんのメッセージ『ダーウィンの進化論』を拝読し、
改めて、私自身、人間の女としてこの世に生まれてきたことに、私自身が真の幸せを見出せそうな気がします。
ありがとうございました。
何言ってるんでしょうね。勝手に言わせておいて下さい。
私の好きな為末さんの言葉を二つ。かなり前ですが。

“ぶっ飛ばす”^^

“走って、走って、走りまくる”^^

次、そして北京と、ぶっ飛ばして走りまくって下さい!!

Love☆


投稿者: karen-t☆ (May 16, 2008 10:28:42 PM)

昔の人が積み重ねてくれた知識や経験に、自分なりの知識や経験を付け加えて、それを次の世代に伝えていく。。。なんか、自分が真ん中な感じでちょっと嬉しぃですねhappy02heart04でも、それの繰り返しならいっぱぃ努力shineして、そこから少しでも何かを見つける事が大事なのかもconfidentと思いましたnotenote

投稿者: かぁ (May 17, 2008 4:11:29 PM)

 どこかで
「偉大な科学者とは、偉大な問いかけをした人である」
という言葉を聴いた事があります。
ニュートンは
「なぜ、月は落ちてこないのか」
アインシュタインは
「光と同じ速度で動いたら、光は止まって見えるのか?」
釈迦は
「人はなぜ苦しむのか?」

これら、一見したら馬鹿げた問いかけを本気になって追求した果てに偉人と呼ばれるようになったのだと思います。
自分の中から湧き起こる疑問、問題意識を大切に追求していく過程で真の主体性が生まれ、大きな発見へと繋がるのだと思います。
為末さんの
「なぜ、人の足は速くなり続けるのか?」
その問いかけをしたのは為末さん自身であり、徹底的に追求して下さい。
英語で問題意識を「full time thinking」と表現するらしいです。
期待しています。

投稿者: 輝 (May 17, 2008 6:51:06 PM)

本当はいやなんですけど為末さんの書いた「日本人の足を速くする」の為末さんがハードルを跳んでる裏表紙。その一文、平常心よりもテンションを と有りますが、自分で書くのは何なんですが、上がり調子になりそうです。生活面で
 

投稿者: みっちー (May 18, 2008 6:37:06 PM)

 為末さん、こんばんは。
 先日BSで放送された番組を拝見しました。番組と為末さんのこのお話とが合わさって、なんでしょう、自分の中にあるこの感じ。これが自分でなんなのかわからず、ここ数日を過ごしています。
 でもその中でも『先天的ではなく、後天的に、努力と閃きとその実践によって、人の足が速くなる事をしりました。』この言葉は胸にずどんときました。為末さんがおっしゃったこの言葉の重み、すごさは私にもわかったように思います。

投稿者: 茜 (May 20, 2008 9:53:50 PM)

競技場とかどんな感じなのかなぁ。。
なんだか想像するだけで、感慨深い気持ちになります。
でも、実際競技場を前にすると、きっと為末さんでしか知り得ない、もっと深いものがあるのでしょうね。

足、感触知りたがってるんじゃないのでしょうか^^
試合は本当の??試合なのかなぁ。。
適当に走ることは許されないのかなぁ。。^^
足、慎重に、お大事になさって下さいね☆

今日の雲は大好きな雲。青空です。
自転車とナイキで行ってきます☆

北京、いかがお過ごしでしょうか☆


投稿者: karen-t☆ (May 21, 2008 8:34:13 AM)

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