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2008.04.26

聖火リレー

 よく知りもしない事を知っているかのようにしゃべりすぎていたと、ある日ふと恥ずかしくなり、本当に自分でわかる範囲の事しかしゃべらないように自らを律しています。若さのなせる事とはいえ、浅い所に踏み込んだだけでわかったつもりをするのはよくないと思ったからです。
 そうやって自分自身を律してきましたが、突き詰めれば”走る”という事すら私にはわかっていません。もちろんハードルを”跳ぶ”事もです。物事はわかったと思う範囲までが、知識の器だと思うのですが、そうなってくると何事も書けなくなるという事に気づいてしまいました。ですので、少しだけ手綱を緩めて、まあわからんけれども勘弁してもらう程度のタッチで書くようにしています。

 聖火リレーが揺れています。以前の私ならまず間違いなく率先してこの問題について、一言申すと意気込んでいましたが、今は簡単にそういう事ができません。私はチベット人の友人もいませんし、チベットに行った事もありません。チベット仏教徒でもありませんし、すべて情報でしか知りえません。以前にジャーナリズムについて少し書きましたが、何かで知っているというだけで思い込んでしまうのが一番恐ろしい事です。実際にはどうなのか、本質はなんなのか、これは現場で空気を吸って、そこで生活をして文化に触れて、そのすべてを肌で感じて腹に落とし込まねばなりません。頭ではとうてい理解し得ないからです。
 チベットへの弾圧に対し、それについて我々は何かすべきではないかという事を昔ブログに書こうとした事がありました。アテネ五輪の頃です。このHPに載る事はありませんでしたが、ほんの少しの情報だけで正義が発動してしまうという若者特有の行動だったとはいえ今も基本的な所ではこの問題に対しての姿勢は変わっていません。たぶんまだ問題の本質は理解していませんが。

 聖火リレーへの妨害です。これは中国への抗議とみるか、オリンピックへの抗議とみるか。人によって見え方は様々ですが、私には聖火リレーの走者への抗議にもみえます。
 私は以前アジア大会の聖火リレーをやった事がありますが、聖火リレーの走者を務めた事を非常に名誉に思っている人間はたくさんいます。私もそうでした。世界中を回ってくるトーチを自分がつないでいるという感動に、本当に涙される方もいるほどです。
 それが、今回の聖火リレーを受けた段階では、少なくともこの件に関しては政治的に思想的にいっさいニュートラルなポジションだったわけですが、急に彼らはその騒動に巻き込まれたわけです。

 デモや政治行動はインパクトが無ければニュースにならず、ニュースにならなければ波及もせずというのはわかります。ですが、その中心にされてしまったなんら政治的意図の無い人間の心情も察していただけないかと思うのです。むしろポジションとしては世界平和へ向けての行動になるはずの聖火リレーが揺れる事以上に、何より走者が一番揺れているのではないでしょうか。
 
 さらに選手も揺れています。4年に1度だけ注目されて、国家の威信を背負うアスリートたちの本当の戦いは、アテネを終えてからここまでの4年間にあります。世の脚光も浴びず、生活を犠牲にしながら、選手たちはここまで戦い抜いています。オリンピックイヤーなどその4分の1に過ぎません。それまでの表に出る事の無い3年に耐えたからこそ今年があるのです。
 その最後の1年に様々な騒動があるという事自体が選手の心を揺らしています。あらゆるものを犠牲にしてここまで選手は辿り着いているのに。

 なぜ今年なのか。チベットへの弾圧は数十年続いていたはずではないか。だったらもっと早く叫ぶべきだったのではないか。せめて中国でのオリンピック開催が決まった年にでも。

 自らの思う所を何にも遮られる事無く、高らかに発言できるのは民主主義の誇りです。ですからどうぞ、何ら政治的に思う所無く中心にされてしまった人々を混乱させぬよう。同じような意見を持たぬ人間を排除するようでは、チベット問題と変わらない構図ではないかと思うのです。

 チベット問題は解決されねばなりません。世界がフラットになり、国際的な倫理基準が高まった世の中では、人権弾圧など許されない事だからです。
 そして同じように世界平和の象徴としての聖火リレー走者と、これまで人生をかけてきて、国の威信をかけて戦おうとしている選手たちも守られるべきです。これらは切り離すべきです。なにしろオリンピックとチベット問題は、全く別の問題なのですから。

2008.04.26 | 固定リンク | コメント (14) | トラックバック (1)

Comment

テーマと関係のないコメントは削除させていただきます。

おはようございます。
為末さんがこの話題についてブログに書き込まれるのではないかと前々から思っていたのですがちゃんとお考えがあって今のタイミングだったのですね。
非常に難しい問題が絡み合っていたりしてニュースでしか内容を知りえない私なんかは簡単に話題に出すことはできないと思っているのですが。。地球上に生きる一人の人間として大きく見れば共通する思いは権力や政治などの関係ないスポーツを楽しむ。感動する。みんなで1つのことを成すのですから協力する・共有するという気持ちが根源にあるべきではないかと強く思います。
まったく趣旨がずれ始めている・・・聖火やオリンピックの趣旨がずれていてそれがそのまま騒がれてしまっている。そんな残念な思いでニュースを見ています。
今日の長野での聖火リレーが無事、平和のうちに次へとバトンタッチされることを切に願います。
自分の考えが正しいと思って疑わないこと、ちょっとした情報でそれが正解でそれが全てだと思ってしまうこと。そのことの危険性を心にとめて、自分の思いを相手にちゃんと伝える術と人の気持ちや言葉を聞き取る心(耳)を持たなければいけませんね。
私自身も大事なことからずれないように生きて生きたいと思います。

投稿者: 麻衣 (Apr 26, 2008 9:16:39 AM)

おはようございます。

今朝のニュースを見て、為末さんのメッセージを読んで、少し思うことがありました。

あらゆる世界問題がメディアを彷徨い続ける中で、私たち一般市民が普通に生活しているだけではとても知ることの出来ない本当の真実を、一体どこでどのようにして知ることが出来るのか。。。
今まであまり深く考えることのなかった、ジャーナリストに対しての目の向け方が変わりました。
物事の真相はとても深く、それを伝えることさえ難しい状況なのだということ。
解決への道が必ず開けるわけではないのですが、今私たちがそういった問題を頭で理解するのではなく、“感じる”ことが大切なのだと思いました。

今回の北京オリンピックに関して、たった今沸々と感じ取れたことは、選手の方々の静かで熱い想いです。
そんな想いで聖火を見つめ、心より応援したいと思います。

投稿者: えん (Apr 26, 2008 10:43:00 AM)

世の中には情報が溢れているとはいえ、溢れているからこそ私自身、その溢れ出たうわずみ部分しか知らないように思います。
器の中には本当は様々な情報が沈殿していて、その中にはもっといろいろな事柄があると思います。
それをかき混ぜる役目は、何かに特別な関心を抱いている熱い人間だと感じます。

アスリート達がオリンピックまでの4年間をどのようなおもいで過ごしてきているか。
そしてまた、オリンピックイヤーはその4分の1に過ぎない。
というのが今回のお話の中でもことさら強く私に響きました。

投稿者: 小原愛 (Apr 26, 2008 11:43:25 AM)

やはり避けて通れない題名ですね。
気にはなっていたのですが、、、
言論、行動、様々な自由はあります。
多少国によっては制限あるかもしれませんが、、、
あくまでも個人的な意見ですが、確かに聖火に対しての妨害は本当に理解に苦しむ所もあります。ですがここまできてようやく表面化してきた事に対してはやっとここまで来たかと言う当事者もいるような気がしてなりません。
今までも様々な試みを行ってきて効果が無かった?薄かった?最終手段?的にも見受けられますが、、、
ここまで来る前にもっと平和的に話し合いが出来なかった事が悔やまれて仕方ありません。
弾圧などは私たちの想像をはるかに超えている事態でしょう。
政治とスポーツは切り離すのが当然でしょうがなかなか上手く行かないようです。
どうでしょうか?サッカーの中田選手あたりと一緒に政界へ打って出ませんか?

投稿者: WING (Apr 26, 2008 2:40:27 PM)

こんにちは
中国を正しいとか間違っているとか言うために
聖火ランナーや北京オリンピックの代表選手に
なるわけじゃありませんよね
4年に一度の大会が今回は北京であるから
北京に行くんですよね

投稿者: パワーリフター福島 (Apr 26, 2008 4:31:02 PM)

こんばんは、為末さん。

「なぜ今年なのか」
私もニュースなどを見てそう思いましたが、チベットの人達は前から叫んでたと思いますよ。
ただ、日本の人々が興味を持たなかっただけでは?知らなかっただけでは?日本のメディアが報道しなかっただけでは?と思います。

チベットの弾圧は確かに許されないことですが、それに対する怒りの矛先は中国政府に向けるべきであって、聖火ランナーやオリンピックに向けるべきではないですよね。
関係ない人たちに暴力行為を働いて問題解決になると思ってるんでしょうか?
平和の祭典なのに暴力沙汰になって悲しいです。
選手の人たちにはどうか危害が及ばないでほしいです。

投稿者: カジキマグロ (Apr 26, 2008 8:23:22 PM)

イタリアのマラソン選手バルディニが、チベット問題について記者から問われ、「自分には思うところがあるが、それを言うとあれこれ利用されるので差し控えたい」と述べていました。ひとつの見識だと思います。
長野の聖火リレーについては、日本のマスメディアが、何か騒動になることを期待してあおったという印象も受けます。結局、右翼団体がはりきって中国人留学生を怪我させたという後味の悪いこととなりました。
オリンピックが政治に翻弄されるのは世の常ですが、IOCやJOC、そしてアスリートがそれぞれの立場からスポーツの政治利用と一線を画す努力が大切と思います。そのことと個々のアスリートが様々な政治的事象に対して個々の責任で発言することは矛盾しないと思います。
古い話ですが、私自身は、ソ連がアフガニスタンに侵攻したことには、大いに怒りましたがJOCがモスクワオリンピック不参加を決めた時には本当にがっかりしました。当時、選手だった柔道の山下さんが必死に選手の気持ちを訴えていたことを今でも鮮明に憶えています。
陸上ファンの私としては、宗兄弟そして瀬古さんがチェルピンスキーと最後まで競り合う姿を見れなかったのが本当に残念です。あの時でしたら男子マラソンでメダルを二つ取れたと思います。
中国に意見があれば、中国大使館や領事館に意思表示をすればよいわけで、聖火やオリンピックに妨害やテロを持ち込むのはスジちがいです。

投稿者: 小屋松 敬介 (Apr 26, 2008 10:05:19 PM)

昔ジャーナリストになりたかった為末さんのことですから、これらの問題もきっと真摯に受けとめておられることだろうなと思っておりました。
為末さんが仰っる通り、確かに、オリンピックとチベット問題は切り離して考える問題ですね。
私自身、痛切にそのように思います。
オリンピックとチベット(政治)の問題を一緒にしてしまってはならないと。
しかし、実際、もうすでに混濁してしまっているところに現実問題としての現実の悲況を感じます。
オリンピックと政治(チベット)問題は全くをもって別の問題です。
現実問題として、以前コメントさせて頂きましたが、政治(チベット)問題は国のトップに任せ、日本であれば、福田首相率いる国のトップにお任せ致しまして、その内部の真相や正しい情報は各メディアのジャーナリストの方に引き続き期待しつつお任せしたいところです。
某週刊誌頑張ってね。
是非次は読ませ頂きます。
聖火リレーの妨害は、ほんと理解し難い問題です。
本質からかなりズレたところに問題があるような気がしますね。
名誉ある聖火リレーの走者として、お務めを果たされた選手の方が気の毒でなりません。

為末さんが、これらの問題を踏まえ心が揺れるお気持ち、とてもよくわかります。
平和の祭典であります4年に1度のオリンピック、
並々ならぬ努力のもと、戦い抜いて、様々なことに耐えてきて、あらゆるものを犠牲にして、やっと辿り着いたこの4年間。
しかし
“オリンピックイヤーはその4分の1に過ぎない”
なんでしょう、どこか人命の尊さと簡単に失う命の儚さにも似た切なさを感じました。

為末さん、頑張って下さい!
GO!北京です☆

“少しだけ手綱を緩めて、まあわからんけれども勘弁してもらう程度のタッチで書くようにしています”
久しぶりにふいてしまいました。^^
走る時、手綱、締め忘れないように☆
いや、いっそ手綱ごと全部外してしまえば^^
楽に走れるかもョ☆

投稿者: karen-t☆ (Apr 27, 2008 12:06:47 AM)

五輪と政治が全然関係なくなるといぃですね★でも、こんなにたくさんの国や人に一度に注目される機会ってなかなかなぃから、やっぱりちょっと難しいのかなぁ(*_*)選手のみなさんが安心して試合に臨めますよぅに…。そして、にこにこ笑顔で大会が終われますよぅに…。

投稿者: かぁ (Apr 27, 2008 10:37:15 PM)

コメントとは関係ないだろと思われますが、handの活用範囲は広いけれど。足の指の活用範囲は狭く思います。ヨーイドンで手を挙げるのは足よりも早く思います。
 そこで足の指で字を書いたりすれば神経がとぎすまされてスタートが早くなると思います。Thank youくだらなくてすいませんでした。

投稿者: mitio (Apr 29, 2008 1:06:04 PM)

もう少し気を抜いても良いかなと思っています。

どうも考え方が似ているようです。

考えない事で見えてくる物もある様に思います。

リラックス リラックスと思いました。

失礼なコメントになっていたかもしれません・・

投稿者: ムータン (Apr 29, 2008 10:47:15 PM)

 為末さん、おはようございます。
 長野での聖火リレーをテレビで観ました。ニュースでは妨害行為のことが多く取り上げられていて、リレー走者の走る姿や聖火をつなぐシーンが少なく残念でした。こちらをもっと観たかったのが本音です。
 チベット問題について詳しいことはわかりません。確かに今回のことがチベット問題を世の人が知る一つのきっかけにはなったと思います。恥ずかしながら私自身もそうです。それにこういう大きな問題を解決していくには私たち一人一人の力ももちろん必要で大切だとは思います。でもこういう騒動をオリンピックの場で起こし、今のような妨害行為をこの場で続けていくのは違うと思います。これはオリンピックです。この舞台ではリレー走者や選手のみなさんは守られるべきです。為末さんのお話からそこは絶対であってほしいと思いました。オリンピックに全身全霊を捧げて頑張ってこられた選手のみなさんが自身の競技に集中できる、そんな環境を作っていくことがオリンピックを楽しみに応援する私たちにできることではないかと思います。

投稿者: 茜 (Apr 30, 2008 10:25:16 AM)

為末選手のご活躍を心から応援しております。
私もこの問題についてあまり知識がありませんでした。
偶然、ブログを通じてチベットの短編映画を紹介していただきました。
良かったら是非、ご覧下さい。
とても参考になると思います。

また、東京五輪で活躍したビリーミルズの映画「ロンリーウエイ」もオススメです。
スポーツ選手を取り巻く人種問題、民族問題、宗教、政治について色々考える題材になると思います。

投稿者: 山根武司 (May 8, 2008 11:17:09 AM)

今年のオリンピックは大変ですね。

また楽しみにしています。

有難うございました。

投稿者: ムータン (May 15, 2008 11:40:46 PM)

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受信 May 8, 2008 11:04:29 AM

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